30秒でいうと
- 東急多摩川線は多摩川と蒲田を結ぶ7駅・5.6kmの線で、7駅とも大田区にあります。各駅停車だけが走り、電車は3両です。
- 国土交通省が公表する成約価格で、多摩川・沼部・鵜の木・下丸子・武蔵新田・矢口渡の6駅を最寄りとする中古マンションの成約は、2024年1〜3月期から2026年1〜3月期までに438件ありました。価格の中央値は5,000万円、1平方メートルあたりでは約80万円です(当方の計算)。50平方メートル以上が78%、70平方メートル以上が49%と、広い部屋の成約が多い線です。
- 駅ごとの差が大きい線です。下丸子は中央値6,900万円・面積の中央値85平方メートルで、工業地域に2002〜2004年に建った65〜105平方メートルの成約が55件を占めます。多摩川は1981年以前の建物が半分以上で、1969年築の45平方メートルが2,000万円台から、2012年築の80〜90平方メートルが1億円を超えるまで幅があります。矢口渡は106件と最も多く、中央値4,150万円と最も低い駅でした。
東急多摩川線と6つの駅
東急多摩川線は、2000年8月6日に目蒲線が目黒〜武蔵小杉間(目黒線)と多摩川〜蒲田間に分かれてできた線です。元の目蒲線は1923年3月11日に目黒〜丸子(いまの沼部)、同年11月1日に丸子〜蒲田が開通した、東急の最初の路線でした。列車は各駅停車のみ、編成は18m車3両です。東急の駅間距離を足すと多摩川〜蒲田は5.6kmで、7駅があります(当方の計算)。
| 駅 | 所在地 | 1日平均乗降人員(2025年度) | 前年比 | 中古マンションの成約件数(2024年1〜3月期〜2026年1〜3月期) |
|---|---|---|---|---|
| 多摩川 | 大田区田園調布 | 3,978人 | +8.2% | 40件 |
| 沼部 | 大田区田園調布本町 | 10,529人 | +2.3% | 41件 |
| 鵜の木 | 大田区鵜の木 | 20,137人 | +3.5% | 83件 |
| 下丸子 | 大田区下丸子 | 32,582人 | +3.6% | 81件 |
| 武蔵新田 | 大田区矢口 | 26,211人 | +1.9% | 87件 |
| 矢口渡 | 大田区多摩川 | 26,135人 | +2.5% | 106件 |
| 蒲田 | 大田区西蒲田 | 81,876人 | +3.4% | 174件 |
乗降人員は東急多摩川線の駅としての数字で、自線内の乗り換えは除き、他社線との乗り換えは含みます。多摩川駅は東横線・目黒線の分とは別に数えられています。東急多摩川線全体の一日平均輸送人員は143,781人(前年比2.8%)でした。蒲田の成約件数には、JR・京急・池上線の蒲田駅を最寄りとする物件も入っています。この記事では、題名の5駅に沼部を加えた6駅を見ます。
駅の名前は何度も変わっています。多摩川は「丸子多摩川」(1926年)、「多摩川園前」(1931年)、「多摩川園」(1977年)を経て、2000年8月から今の名です。沼部は開通時「丸子」で、1926年から「沼部」。鵜の木は1924年に「鵜ノ木」として設けられ、1966年から今の表記。矢口渡は開通時「矢口」で、1930年から今の名です。
出どころ: 東急電鉄「東急多摩川線の歴史」(東急線ヒストリー)、「2025年度 駅別乗降人員・輸送人員」(1日平均・2026年6月25日更新)、各駅の駅情報(所在地)。いずれも2026年10月10日確認。成約件数は国土交通省「不動産情報ライブラリ」(次の節)。
調べた範囲と数え方
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、東急多摩川線の駅ごとに、中古マンション等の成約価格情報を調べました。レインズ(不動産会社どうしの物件情報の仕組み)に登録された成約を、国土交通省が個別の取引を特定できない形に加工して公表しているものです。
調べた範囲: 2024年1〜3月期から2026年1〜3月期まで(2026年10月10日に確認)。最寄駅が多摩川・沼部・鵜の木・下丸子・武蔵新田・矢口渡の6駅の成約438件を、一覧から1件ずつ読み取って当方で集計しました。蒲田は件数だけを読みました。同じ画面に出る国土交通省のアンケートによる取引価格情報は、成約と重なることがあると注記があるため数えていません。
6駅の成約を並べる
| 最寄駅 | 件数 | 価格の中央値 | 面積の中央値 | 建築年の中央値 | 駅からの徒歩の中央値 | 1平方メートルあたりの中央値(当方の計算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 多摩川 | 40件 | 5,050万円 | 65平方メートル | 1980年 | 6分 | 約82万円 |
| 沼部 | 41件 | 4,500万円 | 60平方メートル | 1995年 | 5分 | 約73万円 |
| 鵜の木 | 83件 | 5,300万円 | 65平方メートル | 2003年 | 5分 | 約80万円 |
| 下丸子 | 81件 | 6,900万円 | 85平方メートル | 2004年 | 10分 | 約85万円 |
| 武蔵新田 | 87件 | 4,800万円 | 65平方メートル | 2003年 | 8分 | 約80万円 |
| 矢口渡 | 106件 | 4,150万円 | 65平方メートル | 1995〜1996年 | 9分 | 約71万円 |
| 6駅合計 | 438件 | 5,000万円 | — | — | — | 約80万円 |
6駅合計の中央値5,000万円は、大田区全体の中古マンションの成約(同じ出どころ・同じ期間で2,428件)の中央値がある4,000万円超〜5,000万円以下の帯のすぐ上です。先に見た東急池上線の5駅(223件・中央値5,800万円・約90万円)より、少し低い帯で動いています。間取りはどの駅も3LDKがいちばん多く、矢口渡44件、下丸子39件、武蔵新田29件、鵜の木24件、沼部12件でした。多摩川だけは1LDKの11件が最多です。
| 最寄駅 | 1981年以前 | 1982〜1999年 | 2000年以降 | 50平方メートル以上 | 70平方メートル以上 | 3,000万円以下 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 多摩川 | 21件 | 4件 | 15件 | 29件 | 18件 | 9件 |
| 沼部 | 7件 | 16件 | 18件 | 30件 | 14件 | 10件 |
| 鵜の木 | 8件 | 25件 | 50件 | 70件 | 38件 | 9件 |
| 下丸子 | 9件 | 5件 | 67件 | 71件 | 62件 | 11件 |
| 武蔵新田 | 9件 | 27件 | 51件 | 62件 | 36件 | 20件 |
| 矢口渡 | 17件 | 40件 | 49件 | 79件 | 45件 | 27件 |
公表値には都市計画の用途地域も載っています。6駅の438件のうち、工業地域が75件、準工業地域が147件で、合わせて51%でした。下丸子の81件は57件が工業地域、矢口渡の106件は82件が準工業地域です。どちらも住宅を建てられますが、工場も建てられる地域です。いっぽう多摩川・沼部・鵜の木は第一種住居地域が中心でした。
出どころ: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」不動産価格(取引価格・成約価格)情報の検索(東急多摩川線・各駅/中古マンション等/成約価格情報/2024年第1四半期〜2026年第1四半期、2026年10月10日確認)。中央値と1平方メートルあたりは当方の計算。大田区全体と池上線の値は同じ画面で当方が数えたもの。
駅ごとの顔
多摩川(40件)
所在地は田園調布が32件、田園調布本町が8件。1981年以前に建った建物が21件と半分以上を占め、その中央値は3,300万円(面積の中央値45平方メートル・1平方メートルあたり約60万円)です。田園調布の駅から徒歩4分・1969年築・45平方メートルという同じ条件の成約が5件あり、2,100万〜3,400万円でした。反対側には、田園調布・徒歩6分・2012年築・80〜90平方メートルの3件(1億1,000万〜1億4,000万円)と、徒歩4〜5分・1998年築・80〜105平方メートルの3件(1億1,000万〜1億3,000万円)があります。2000年以降の15件の1平方メートルあたりは約114万円で、6駅でいちばん高い値でした。古い小さな部屋と、新しい広い部屋が、同じ駅の中で2,000万円台と1億円台に分かれています。
沼部(41件)
所在地は田園調布南28件、田園調布本町13件。6駅の中では用途地域が第一種住居地域に偏り(28件)、建物も1980年代〜2000年代が中心です。50平方メートル以上で2000年以降の14件は中央値6,550万円(4,500万〜1億1,000万円)、1999年以前の16件は4,550万円(2,400万〜6,600万円)でした。
鵜の木(83件)
所在地は鵜の木65件、下丸子17件、西嶺町1件。90平方メートル以上が17件と、広い部屋の成約が目立ちます。下丸子の徒歩6〜10分・1989〜1993年築・SRC造・60〜135平方メートルという同じ条件の成約が17件あり、4,900万〜1億1,000万円でした。1982〜1999年に建った25件の面積の中央値が90平方メートルと大きいのは、この分です。鵜の木の徒歩3〜4分・2015年築と2019年築は13件あり、55〜80平方メートルの12件は5,600万〜9,200万円でした。
下丸子(81件)
所在地は下丸子が78件。価格の中央値6,900万円、面積の中央値85平方メートル、70平方メートル以上が62件と、6駅でいちばん広くて高い駅です。81件のうち57件が工業地域で、下丸子の徒歩9〜15分・2002〜2004年築・65〜105平方メートルという同じ条件の成約が55件、5,300万〜9,500万円(中央値7,500万円)でした。駅の数字は、この一群でほとんど決まっています。いっぽう駅から徒歩1分には1970年築・40平方メートルの部屋が5件、1,700万〜2,500万円で売れています。
武蔵新田(87件)
所在地は下丸子47件、矢口34件、千鳥3件、池上2件、東矢口1件。下丸子の工業地域・2003年築・徒歩11〜14分・75〜110平方メートルが11件(5,700万〜9,300万円)あり、下丸子駅と同じ一群が、こちらを最寄駅としても出ています。用途地域は準工業56件・工業18件です。小さな部屋も多く、20平方メートル以下の1R・1Kが5件、700万〜900万円でした。3,000万円以下は20件と、矢口渡に次いで多い駅です。
矢口渡(106件)
所在地は多摩川48件、矢口43件、東矢口7件、新蒲田4件、池上2件、西六郷1件、川崎市幸区1件。6駅でいちばん件数が多く、価格の中央値4,150万円と1平方メートルあたり約71万円は、いちばん低い値でした。3,000万円以下が27件あり、多摩川・1974年築・25〜35平方メートルの5件は800万〜1,800万円です。新しい側では、矢口・徒歩12〜13分・2020年築が14件あり、65〜75平方メートルの13件は6,000万〜8,300万円。古い側では、多摩川・徒歩12〜13分・1983年築・SRC造・65〜75平方メートルが10件、3,500万〜5,400万円でした。同じ徒歩12〜13分でも、築年で2,000万円以上の差が出ています。
出どころ: 同上(6駅438件を当方で集計)。所在地は公表どおり町名まで。建物名は公表されないので、同じ所在地・用途地域・徒歩・建築年・面積のものを「同じ条件」と書いています。
50平方メートル以上・2000年以降の建物はいくらか
| 最寄駅 | 件数 | 価格の中央値 | いちばん安い〜高い |
|---|---|---|---|
| 多摩川 | 15件 | 8,200万円 | 6,000万〜1億4,000万円 |
| 沼部 | 14件 | 6,550万円 | 4,500万〜1億1,000万円 |
| 鵜の木 | 39件 | 6,000万円 | 3,400万〜9,200万円 |
| 下丸子 | 63件 | 7,300万円 | 4,500万〜9,500万円 |
| 武蔵新田 | 37件 | 6,300万円 | 3,500万〜9,300万円 |
| 矢口渡 | 35件 | 6,200万円 | 3,600万〜9,800万円 |
同じ50平方メートル以上でも1999年以前の建物なら、矢口渡44件・中央値4,050万円(1,000万〜5,500万円)、下丸子8件・3,700万円(1,700万〜5,900万円)、武蔵新田25件・4,500万円(1,900万〜7,000万円)、沼部16件・4,550万円(2,400万〜6,600万円)でした。鵜の木(31件・5,000万円)と多摩川(14件・4,450万円)は、1990年前後の広い建物が入るぶん、古い側の上限が1億円を超えています。
出どころ: 同上(当方の集計)。
3,000万円以下もある
6駅で3,000万円以下の成約は86件で、矢口渡27件・武蔵新田20件・下丸子11件・沼部10件・多摩川9件・鵜の木9件でした。中身は、35平方メートル以下の1R・1K・1DK・1LDKが49件、40〜55平方メートルが35件(うち30件は1960〜1980年代に建った部屋)、残り2件は1980〜1981年築の65〜70平方メートルでした。大田区全体の2,000万円以下・3,000万円以下の成約の中身は、大田区で2,000万円・3,000万円以下の中古マンションにまとめています。
この数字の読み方
- 価格は丸めた値、面積は5平方メートル刻み、取引の時期は3か月単位、所在地は町名までで公表されています。1平方メートルあたりの値は、当方が「価格÷面積」で出したもので、実際の面積とはずれます。
- 同じ条件の建物で続けて売れると、その駅の中央値が動きます。下丸子の2002〜2004年築(55件)、鵜の木の1989〜1993年築(17件)、矢口渡の2020年築(14件)がその例です。駅の相場というより、その建物の相場を見ていることになります。
- 最寄駅は公表値に書かれているものをそのまま使いました。矢口渡の106件には川崎市幸区の1件が入っています。下丸子の工業地域の一群は、下丸子駅と武蔵新田駅の両方に分かれて出ています。
- 乗降人員と価格を同じ表に並べましたが、人が多い駅が高いという関係は、この6駅の数字からは言えません。乗降人員がいちばん多い下丸子は中央値がいちばん高い駅ですが、2番目に多い武蔵新田の中央値は4,800万円で、いちばん少ない多摩川(5,050万円)より低い値でした。
- 東京都区部全体の成約の1平方メートルあたりの単価は、2025年に130.75万円でした(東日本不動産流通機構)。数え方が違うので、今回の値と並べて高い・安いは言えません。
出どころ: 国土交通省「不動産情報ライブラリ」の画面の注記、東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」2025年の年報。
買う人・売る人が見る点
- 建築確認の日付。新耐震基準は、建築確認が昭和56年(1981年)6月1日以降のものです。公表値の「建築年」は完成した年なので、1981年・1982年に完成した建物は建築確認の日で確かめます。建築計画概要書は大田区役所本庁舎7階のまちづくり情報閲覧コーナーで見られます(閲覧は無料、写しは1件300円)。6駅で1981年以前の成約は71件(16%)で、多摩川の21件と矢口渡の17件が多めでした。
- 用途地域と周りの様子。下丸子・武蔵新田・矢口渡は工業地域・準工業地域の物件が多い駅です。昼と夜、平日と休日で周りの様子を見ておくと、価格の理由が分かることがあります。
- 地図で確かめること。大田区ハザードマップ(防災地図)には、多摩川の洪水、中小河川・内水氾濫、液状化の想定が1冊にまとまっています。この線は多摩川に沿って走り、多摩川駅・沼部駅側は低地です。物件の場所を地図で見て、1階や地下の設備が浸水したときに何が止まるかを管理会社に聞いておきます。
- 面積の線。住宅ローン控除は床面積が原則50平方メートル以上(2026年以降の入居で合計所得金額1,000万円以下なら40平方メートル以上)、築年は昭和57年1月1日以後の建築か耐震基準適合の証明が条件です。6駅の成約は78%が50平方メートル以上で、この線を越える部屋が多い線です。
- 修繕積立金。国土交通省のガイドラインでは、20階未満・延べ床面積5,000平方メートル未満の建物の目安は1平方メートルあたり月額平均335円(幅235〜430円)です。85平方メートルなら月2万8,000円前後が目安になります(当方の計算)。2000年代の広い建物が多い線なので、長期修繕計画と積立金の残高を見てから値段を考えてください。
- 耐震の助成と手続きの行き先。大田区には分譲マンションの耐震診断(限度額300万円)、耐震改修工事(限度額4,000万円)、耐震コンサルタント派遣(無料・条件あり)の助成があります。確定申告の税務署は、田園調布・鵜の木は雪谷税務署(大田区雪谷大塚町4番12号)、矢口・下丸子・多摩川・新蒲田は蒲田税務署(大田区蒲田本町2丁目1番22号)です。町名ごとの管轄は国税庁の一覧で確かめてください。
出どころ: 大田区「建築計画概要書等の閲覧・発行」「分譲マンションの耐震化助成」「大田区ハザードマップ(防災地図)」、国税庁 タックスアンサー No.1211-3[令和8年4月1日現在法令等]、国税庁 東京国税局「東京都品川区・大田区」の管轄地域一覧、国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)。旧耐震の見分け方は築年数②旧耐震基準の見分け方に。